事例紹介

パッケージは"広告"である ニッポンハムグループがD-Plannerに託した理由イメージ

パッケージは"広告"である ニッポンハムグループがD-Plannerに託した理由

ニッポンハムグループ(日本ハム株式会社・株式会社宝幸)

業種 食品・飲料
パッケージは"広告"である ニッポンハムグループがD-Plannerに託した理由イメージ

(左から)株式会社宝幸 マーケティング推進部 商品企画部長 青山隆弘、日本ハム株式会社 IT・DX推進部リーダー伊藤恵里奈、株式会社宝幸 マーケティング推進部商品企画課 加藤理久

消費者が店頭で商品パッケージを見る時間は、わずか数秒といわれる。その短い時間で商品価値を伝えて手に取ってもらうためには、パッケージの完成度が欠かせない。一方で、その評価は長年、担当者やデザイナーの経験や感覚に依存する部分も大きかった。

こうした課題に対し、ニッポンハムグループはクリエイティブ評価ソリューション「D-Planner」を導入。グループ会社である「宝幸」では、実際に商品パッケージ開発に活用を進めている。AIによる定量分析は、商品企画やデザイン制作、社内承認プロセスをどのように変えたのか。日本ハム株式会社 IT・DX推進部リーダーの伊藤恵里奈氏、株式会社宝幸 マーケティング推進部 商品企画部長の青山隆弘氏、同部 商品企画課の加藤理久氏に話を聞いた。

──今回の取り組みは、ニッポンハムグループ全体のDX/AI活用の中でどのような位置づけでしょうか。

伊藤恵里奈氏(以下、伊藤氏):D-Plannerの導入は、ニッポンハムグループ全体で進めているDXやAI活用の中でも、データにもとづく意思決定を現場業務に定着させるための取り組みです。

当社では、AIを安全かつ効果的に活用するためのデータ基盤整備を進める一方で、営業やマーケティング、商品開発といった現場において、デジタルやデータを実際の成果につなげる取り組みを広げてきました。

たとえば、当社では生成AIを活用し、生活者の擬似的なペルソナがアンケートに回答する取り組みも進めています。生活者理解や仮説構築を短時間で行う仕組みであり、こうした現場起点のAI活用の普及に努めています。

その中でD-Plannerは、パッケージや販促物といったクリエイティブ領域において、これまで感覚や経験に依存しやすかった判断を定量的に可視化し、比較・検証できるようにするためのツールとして位置づけています。

商品や販促施策を取り巻く競争環境は年々厳しくなっています。限られた時間やコストの中で意思決定の精度を高める必要がありますが、社内での調査や議論には多くの工数がかかっていました。

ですが、D-Plannerを活用することで、複数案を同じ条件で評価しながら改善サイクルを回せるようになりました。従来は時間をかけて議論していた判断も、客観的なデータをもとに進められます。意思決定のスピードと質を両立できる点は大きな価値だと感じています。

  

──導入のきっかけは何だったのでしょうか。

伊藤氏:本格導入は2025年11月です。その前に数カ月のトライアルを実施し、効果を確認したうえで採用を決定しました。

D-Plannerの存在は、あるIT関連の展示会でNTTデータ様のブースを訪れた際に知りました。もともとマーケティング領域で活用できるツールを探しているなかで、さまざまなAIサービスが並ぶ中でもパッケージ評価に特化して使える点が非常に印象的でした。

実際にトライアルを進める中でも、開発部門からは「これは使える」という声が多く上がりました。毎年1月に得意先を招いて新商品を紹介する機会がありますが、その際の展示パネルにもD-Plannerを活用しています。現場での期待が高かったこともあり、本格運用の開始時期を前倒しして導入した経緯もあります。

  

──導入にあたって課題はありましたか。

伊藤氏:トライアルでは複数の組織に参加してもらいましたが、評価は一様ではありませんでした。

パッケージを活用して販売する商品を扱う部門からは前向きな反応が多くありました。一方で、ニッポンハムグループには商品カテゴリーや販売形態の異なる様々な事業があり、パッケージデザインが購買接点となるケースとそうでないケースがあります。そのため、D-Plannerの活用方法については、事業特性に応じて検討する必要がありました。

また、「AIの分析結果をどこまで信用してよいのか」という声もありました。実際、長年の経験や感覚で判断してきた領域ですから、現場に慎重な意見が出るのは自然なことだったと思います。

ただ、NTTデータ様からは分析の仕組みや学習データについて詳しい説明を受けるなかで、現場の印象も変わっていったと感じています。

D-Plannerは何万規模のアンケートや、脳活動データをもとにしています。一般的なAIにありがちな単なる参考情報ではなく、意思決定に活用できるツールだと認識するようになりました。

  

──今回、宝幸さまでの活用を進めた理由を教えてください。

伊藤氏:宝幸の食品パッケージは購買行動への影響が非常に大きいからです。店頭で消費者が商品を手に取るかどうかは、パッケージによって大きく左右されます。

事前検証では複数案の比較やレポート作成を通じて、意思決定の再現性を高められる手応えがありました。ニッポンハムグループ全体へ展開していくうえでのモデルケースになり得ると判断しています。

  

──宝幸さまからみても、パッケージの影響は売り上げに影響すると感じていますか。

青山隆弘氏(以下、青山氏):そうですね。私たちにとってパッケージは広告そのものです。特に大規模な広告投資が難しい商品では、店頭で消費者に商品の魅力を伝える重要な接点になります。

消費者は売り場で何秒も商品を見続けるわけではありません。その短い時間の中で目に留まり、手に取っていただけるかどうかが重要になります。

一方で、これまではデザインの良し悪しを担当者や関係者の好みで判断する場面もありました。本当に伝えたい内容が目に入っているのか、棚で目立つのか、ターゲットに好まれるのかといった点を客観的に判断するのは簡単ではありませんでした。

社内アンケートを実施することもありましたが、10人に聞けば10通りの意見があります。多数決だけでは判断できないケースもありますし、説明の根拠として十分ではないこともあります。

D-Plannerを活用することで、担当者の感覚だけではなく、客観的なデータを根拠として提示できるようになりました。社内会議や承認プロセスでも、「なぜこのデザインを選んだのか」を説明しやすくなったと感じています。

  

──実際にはどのような商品で使われているのでしょうか。

青山氏:現在は家庭用の新商品やリニューアル品に幅広く活用しています。商品企画担当者がデザイン決定前の段階で分析を行い、複数案を比較しながら検討を進めています。

もちろん、すべてをAIに任せるわけではありません。商品のコンセプトやブランドとして譲れない部分は人間が決めます。そのうえで、客観的な視点を加えるためにD-Plannerを活用しています。

導入後は意思決定のスピードも上がった印象があります。「AIが言っているから従う」ということではなく、「なるほど、そういう見方があるのか」と納得しやすくなったことが大きいと思います。

  

──では、具体的な活用事例を教えてください。

加藤理久氏(以下、加藤氏):チーズデザートの「ロルフ チーズスイーツ」は代表的な事例です。リニューアル前は商品の特徴やフレーバーが十分に伝わっていないという課題がありました。そこで複数のデザイン案を制作し、D-Plannerを使って検証しながら改善を重ねました。

こちらが訴求したいポイントに十分な注目が集まっていなければ、写真や文字のサイズ、配置を見直します。その結果を再び分析し、さらにブラッシュアップするという流れです。

従来も社内アンケートは実施していましたが、D-Plannerなら分析結果が可視化されるため説得力が高まります。リニューアル前後を比較すると「なぜこの変更が有効なのか」を説明しやすくなりました。

もう一つの例が「ロルフ おやつレアチーズケーキ」です。従来のデザインには情報量が多く、ややにぎやかな印象がありました。今回は女性に受け入れられやすいデザインをめざして大幅に刷新しましたが、D-Plannerで分析した結果でも狙った印象が強まっていることを確認できました。

こうした検証ができることで、リニューアルの方向性に対する確信が持てるようになりました。

事例:「ロルフ チーズスイーツ」「ロルフ おやつレアチーズケーキ」

また「日本のいわし」シリーズのリニューアルでは、D-Plannerで商品名や訴求ポイントへの視線の集まり方を確認しながらデザインを調整しました。

文字の配置が縦か横かという違いだけでも評価は大きく変わります。商品名や重要な訴求ポイントに均等に注目が集まるよう調整した結果、以前よりも伝えたい内容が伝わりやすいデザインになったと考えています。

  

──活用していて感じる価値は何でしょうか。

加藤氏:自分たちだけでは気づけない視点が得られることです。長期間商品開発に関わっていると、どうしても見慣れてしまい、本来見えているはずの課題が見えなくなることがあります。D-Plannerを使うと、意図していない場所に注目が集まっていることがわかる場合があります。

そうした機能により、コンセプト通りのデザインになっているかを客観的に確認できます。方向性が合っているかどうかを判断するための有力な材料になり、開発やデザインの精度を高めながら進められる点は非常に大きな価値だと思います。

  

──今後はどのような活用を考えていますか。

加藤氏:今後は棚割り分析にも力を入れていきたいと考えています。パッケージ単体ではなく、実際の売り場環境の中でどのように見えるのかを分析することで、より実践的な改善につなげたいですね。

青山氏:営業部門での活用も進めたいと思っています。バイヤーとの商談や売り場提案でも、客観的なデータを根拠として示せるようになります。提案の説得力向上にもつながると考えています。

伊藤氏:私たちにとってAI導入そのものが目的ではありません。重要なのは、現場の意思決定をより良くすることです。D-Plannerは経験や勘を補強するための、当社にとって大切なツール。実際に活用するなかで、その価値を強く実感しています。今後も活用範囲を広げながら、データにもとづく商品開発やマーケティングをさらに推進していきたいと考えています。